薬局での無料回収は2017年1月末まで|水銀体温計・血圧計などは廃止方向へ

万年腰痛の私は時々酷くなると整形外科に掛かっています。当然その際に湿布の処方を受けたりするのですが、先日その処方箋を持って薬局行ったところ、一枚のポスターに気がつきました。それは「水銀体温計の回収」についてというものでした。全く知らなかった私は凝視しました。すると薬剤師のお姉さんが背後から優しく「今月末までなんでおうちにあったら持って来て下さいね」の一言をくれました。現在、家庭にある水銀を含む体温計や血圧計などの回収を行っているそうです。その詳細について調べたのでお伝えしたます。

スポンサーリンク

全国で行われていた水銀式の体温計・温度計・血圧計の回収

私が見たポスターはこれでした。各都道府県別に多少の文言を入れ替え全国で使われているようです。

水銀 体温計 温度計 血圧計 回収 

これによると既に昨年末から回収が行われていたようです。全く知りませんでした。

医療現場の水銀体温計などの水銀製品は2020年までに回収の流れ

というわけで、医療現場の水銀製品回収について調べました。まずはニュースソースをどうぞ。

水銀体温計など20年までに使用中止 WHOが指針

世界保健機関(WHO)は2020年までに各国の医療機関で水銀を使った体温計や血圧計などの使用をやめるとする指針をまとめた。各国の政府や国際機関に水銀を使う製品の製造や輸出入をやめるよう働きかける。水銀を使わない製品に切り替え、世界で「水銀を使わない医療」の確立を目指す。

 「水銀に関する水俣条約」では20年以降、水銀が含まれる製品の製造や輸出入を原則禁止することが盛り込まれた。
日本経済新聞:2013/10/12付

なんと2013年に「水銀に関する水俣条約」なるものが採択されており、2020年には水銀製品の製造、輸入は原則として禁止になるそうです。全く知りませんでした。

有害な水銀

水銀が有毒なことは知っています。その理由はやはり国内で発生した深刻な公害汚染病「水俣病」です。私の世代では多分教科書でしか知らない病ですが、今でも苦しみながら水俣病の患者さんは生きています。まだ解決はされていないことが、水銀の恐ろしさを物語っています。そして今回水銀製品を回収する流れを作った条約に「水俣」と入っている事もその被害の多さと惨さを現しています。

水銀とは

まず広辞苑で「水銀」を調べました。以下引用です。

(mercury)金属元素の一種。元素記号Hg原子番号80。原子量200.6。辰砂(しんしゃ)を焼いて得る。常温で液体である唯一の金属。セ氏356.6度で沸騰し、セ氏マイナス38.84度で固化する。硝酸には容易に融解し、また、金属と合金(アマルガム)をつくることが容易である。蒸気は有毒。金の精錬、温度計、各種の水銀塩(昇汞(しょうこう)・甘汞(かんこう)・火薬(雷汞(らいこう)・硫化水銀(赤色顔料)などの製造に用いる。日葡辞書「スイギン、ミズカネ」

広辞苑より

恥ずかしながら私の知識はせいぜい「身体に入ったら危険な成分」程度でした。なので「常温で液体である唯一の金属」だなんて知りませんでしたし、蒸気も有毒であることも意識したことがありませんでした。「無知は罪である」という言葉が過ります。しかし、化学分野においてはそれは仕方の無い事ではないかと思います。

というのも、今こうして広辞苑で調べた内容を引用記述しているだけでも、専門家でしかお目見えしない言葉が沢山あります。ですからこんな「水銀の危険性」に、当時甚大な被害を被った水俣の皆さんには知り得る筈も無い。ましてやインターネットなどの自分で調べるアイテムなんて皆無な時代ですから。本当に大変な公害です。

今も苦しまれている方がいます。その苦痛からせめて学び、水俣で起こった恐ろしい公害を二度と起こさない、起こさせないようにありたいと願うばかりです。

水俣病とは

水俣病はどんな病気なのか?私の記憶では「神経がおかしくなって、手足が震えて、言葉も話せなくなる」という症状です。しかしこれを機にブリタニカ国際大百科事典で調べてみました。以下引用です。

熊本県の水俣湾周辺に1953年頃から発生したメチル(水銀中毒)による慢性の神経系疾患。公害病の一つ。手足や口周辺のしびれで始まり、言語障害、視野狭窄、運動障害、聴力障害などの中枢神経系の障害が起こる。重傷者は回復がきわめて困難で、死亡者も多数出た。

この原因は新日本窒素肥料(現チッソ)株式会社水俣工場のアセトアルデヒド製造過程で副生したメチル水銀が持続的に水俣湾へ排出されたことによる。水域中でいったん超希薄濃度にまで希釈されたメチル水銀は、水中生物の食物連鎖を経ることにより魚介類に水中濃度の数十万倍にも凝縮され、その有毒化魚介を反復大量に摂取した人々のなかから発生がみられたものである。

さらに、母親の胎盤を通過してメチル水銀は胎児へも移行し、生まれた子供にも特異的な症状が発言した。1967年9月、水俣病は公害と認定された。1969年に水俣病患者は損害賠償を求める民事裁判を提訴し、1973年勝訴、また認定作業の遅れに対して行った行政不服審査請求も、熊本県の不作為が認められた。

そして1975年に水俣病患者がチッソの重役と水俣工場重役を殺人、傷害罪で告訴したことを受けて、当時のチッソ社長、水俣工場長らが業務上過失致死傷で起訴され、1977年有罪の判決がくだり、初めて刑事責任が明らかとなった。1993年3月には、国と熊本県の加湿責任を認める熊本地裁の判決がくだり、1995年9月に被害者への一時金支払いと患者団体への50億円加算を柱とする最終解決案がまとめられ、1995年には関西訴訟を除く7裁判所で正式和解が成立。40年あまりに及ぶ訴訟に一応の決着がついた。

また1965年頃には新潟県阿賀野川流域にまったく同様の病気である第2の水俣病(新潟水俣病)が、昭和電工の工場排出物によって発生した。新潟水俣病訴訟は1971年に企業を加害者とする判決が出され、1995年12月に被害者団体と昭和電工が協定書を結んで最終決着した(阿賀野川水銀事件)。

ブリタニカ国際大百科事典より

発生した年から順に経緯を追いかけていくにつれ、本当に怖い病気なんだと再確認できました。しかしそれと同時に水俣病が発生した後にも新潟で発生したということも学校で習った事を思い出しました。これほどの公害病を二度起こすというのはどういう了見なのか・・・正直、言葉を失いました。しかし当時は「高度経済成長期」のまっただ中。環境について真面目に考える人や知識も少なかったんですよね。今と同じ感覚で論じてはいけないのかもしれません。ただ、「先に怖い事が水俣で起こっていたでしょう?!」と言いたくもなる「新潟水俣病」の発生です。

水俣病の患者数

条約にその名称が使われるほどの被害を出した水俣病です。その被害人数にも触れておきます。端的に判りやすく説明されているサイトがあるので詳しい事はそちらをご覧下さい。
こちらのページでは「2,268人で、そのうち1,653人が亡くなっています(平成20年5月31日現在)」とされています。しかしこれは認定された人のみの数です。実際には2万人近くは居たのではないかと推察されています。というのも、「水俣病の認定審査」を希望したのは熊本県と鹿児島県を合わせて17,000人以上居たそうですが、その内認定されたのが2.268人なのです。

しかし、1995年の水俣病未認定患者救済のための政府解決策により、チッソ株式会社から一時支給金を支給された人が10,353人います。この人数と認定患者数を加算すると12,617人という数字が出るため、実際にはもっと多くの患者が居るのだと、居たのだと思われます。というのも、水俣病だと思われる症状が出ていても全ての患者が「認定審査」を希望するとは限らないからです。それは「他人に知られたくない」「知られたら差別されるかもしれない」などの様々な理由があると思われます。それに1995年の一時支給金支払いよりも前に、既に泣くなった人達も大勢いるでしょう。何にしても「水俣病」の患者数は正確にはわかりません。一つだけ幸いなのは、昭和50年以降は患者が出ていない事です。これが未来永劫続く事を祈ります。

水銀に関する水俣条約

2013年1月19日、スイスのジュネーブで開かれた国際連合環境計画(UNEP)において可決された条約です。名前に「水俣」が入っているのは、水銀による公害で最大の被害者数で世界に知れ渡っている事と、この条約を提案したのが日本だからです。そしてこの条約は全会一致で可決されました。辛い過去を意味の有る物へと変える第一歩ですね。

前文

条約の引用です。

この条約の締約国は、水銀が、その長距離にわたる大気中の移動、人為的に環境にもたらされた場合の残留性、生態系における生物蓄積能力並びに人の健康及び環境への重大な悪影響を理由として、世界的に懸念のある化学物質であることを認識し、効率的かつ効果的な一貫した方法で水銀を管理するための国際的行動を開始する。

前文にあるたった数行だけで、水銀には有害性しかないと伝わってきますね。自然発生的な物でない限り、人類が意図して水銀を作るのは今後止めるしかないし、止めて欲しいです。とは言え、安価な材料でもあるため、発展途上国では未だに水銀を使った製品が作られたり売られたりしているのが現状です。

この状況を打破するために、先進国が率先して「水銀に代わる技術、素材」提供をするなど能動的な動きを取るべきでしょう。

ちなみに各都道府県ごとに水銀製品の回収についてガイドラインが設けられていますので、お住まいの地域のルールにそって処分してくださいね。大きな都市の数例を上げておきます。
http://www.city.fukuoka.lg.jp/kankyo/jigyokeigomi/life/suiginn_1_1.html

2017年1月末まで薬局で無料回収されている水銀製品

体温計

今回の水銀製品回収について知るきっかけになった体温計。最近はもっぱら電子体温計が使われていますが、我が家には3つも出てきました。まだ使えるのにもったいない気もします。

水銀体温計 回収

っていうか、脇の下にはさんで使う水銀体温計がそれほど危険なものと思った事がありません。実際のところはどうなのか調べてみました。

すると私が怖がった水俣病の原因の水銀は「メチル水銀」で、体温計に使われている水銀は「金属水銀」で別物でした。なのでそれほど過度に怖がる必要はなさそうです。ただし、人体に入ってもよいものではないですし、医療現場では回収、全廃の流れですので、気になる方は処分したほうが良いでしょう。(将来的に処分費用が発生するかもしれないと薬局の方には言われました)

血圧計

昔ながらの血圧計は当然水銀が使われています。

家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドラインより
水銀血圧計 回収

その他の水銀の含まれている製品

医療現場で使用されている水銀製品は先述の通りですが、その他の水銀製品は思っていたより身近な場所にあります。詳しい事は環境省で公開されている「家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドライン」を参考にしてください。
「水銀に関する水俣条約」によると、2020年以降、水銀を使った製品の製造、輸出入が禁止されるので(ただし、2020年以降も販売、使用が禁止されているわけではありません)、いずれにせよ水銀を使った製品が製造されなくなるのでいずれこの世から消えるのでしょう。

不適切な水銀製品処理で起こった問題

いい加減に取り扱った結果、大変な事になった自治体があります。それが東京都江東区のページに載っていました。

23区内の清掃工場では、ごみの中に水銀を含むものが混ざっていたことが原因で、平成22年度から相次いで焼却炉が停止するトラブルが発生しています。 最近では平成27年12月19日に江戸川清掃工場、平成28年3月11日に中央清掃工場において、焼却炉排ガス中の水銀濃度が自己規制値を超えたため焼却炉を停止する事態が連続発生しました。
清掃工場の焼却炉が停止すると、ごみの収集時間が遅れるほか、23区全体のごみ処理に多大な影響を及ぼします。また、焼却炉の復旧にも莫大な費用がかかります。
区民の皆さまにおかれましては、正しい分別方法でごみをお出しくださいますよう、よろしくお願いします。

http://www.city.koto.lg.jp/seikatsu/kankyo/kusyugomi/suigin.html

水銀を可燃ゴミに混ぜて捨てていたせいで、気化した水銀による汚染が起こってしまったのですね。このような事が起こらないように各自治体のゴミ処理方法について調べておくことが大切なんだと思います。

蛍光灯

意識したことが無かったのですが、古いタイプの蛍光灯や電球には水銀がわずかながらも使用されているそうです。こちらも適切に処理しましょう。(医療機器以外の水銀製品は2020年以降も販売・使用禁止になっているわけではありません)

家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドラインより
水銀 蛍光灯 回収

電池

我が家にあるのは繰り返し使える電池やアルカリ電池ばかりなので多分大丈夫です。しかし古い電池型番が「LR」と付いているものは水銀が含まれているそうです。思い当たる方は探して下さいね。

朱肉

「えっ朱肉に??」と思ったのですが、古い朱肉には水銀が含まれているものがあるそうです。幸い我が家にはそれほど古い朱肉はないので大丈夫と思われます。でもこちらも「あったかもしれない・・・」という方はどうぞ探して下さいね。有毒だそうです。

家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドラインより
朱肉 水銀

最後にひとこと

自宅にある水銀体温計などを慌てて処分する必要はないと思いますが、処分される場合は各自治体のルールにのっとり適切に処分するようにしましょう。

ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

スポンサーリンク

新しい記事を公開するとツイートしています。

フォローする

関連するかもしれない記事