先日、中国産のピーナッツからカビ毒「アフラトキシン」が検出されたニュースで騒ぎになっておりますが、「アフラトキシン」が検出された食品について調べていたら、イタリア産のアーモンドからも検出されていました。昨年のニュースで少し古い情報ですが、注意喚起として取り上げておきます。
イタリア産輸入アーモンドから発がん性のあるカビ毒
まずはソースをどうぞ。
イタリア産輸入アーモンドから発がん性のあるカビ毒 厚労省が検査命令
イタリア産の輸入アーモンドの加工品から、発がん性や中毒性が高いカビ毒「アフラトキシン」が検出され、厚生労働省は21日、埼玉県の輸入会社に対し、今後、輸入するすべての届け出品への検査を義務付けた。
このアーモンドは、埼玉県の輸入会社「スプラウト」が昨年12月にイタリアから輸入したローストされた加工食品6トン。同社が自主検査した結果、1キロ当たり17マイクログラムの「アフラトキシン」が検出された。
アフラトキシンは、天然のナッツ類やスパイス類で見つかることの多いカビ毒で、動物実験では15~18マイクログラム/㎏含むエサを食べたアヒルが死んだり、マウスが肝がんを発症するなど、非常に高い発がん性があることで知られる。
ヒトが食べると急性中毒を起こし、1974年にはインドで肝炎を発症した106人が死亡したケースが報告されている。2008年には工業用に仕入れたベトナム産や中国産の米から検出され、大阪の三笠フーズがそれらの米を酒造会社や菓子メーカーに転売していた「事故米転売事件」があった。
厚労省によるとイタリア産アーモンド加工品の国内への輸入は、過去2年間で3トンから13トンと約4倍に増えていて、「アフラトキシン」が検出されたのは初めてだという。厚労省はこの輸入会社に対して、今後、全量に対する検査の実施を命じた。
ハザードラボ: 2016年01月21日 18時22分
イタリア産輸入アーモンドから発がん性のあるカビ毒 厚労省が検査命令
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/2/12275.html
今回初めてだということですが、中国産以外であっても「アフラトキシン」が検出されていた事に驚きました。
自然界最強のカビ毒「アフラトキシン」
「アフラトキシン」は七面鳥の大量死が起こった際に発見されたカビ毒で、強い発ガン性を持つ成分です。
アフラトキシン
真菌の一種であるアスペルギルスーフラブスおよびアスペルギルスーパラシティクスが産出するカビ毒。強い発がん性と変異性を持つ。
広辞苑より
アフラトキシン
1960年代にイギリスで、10万羽以上の七面鳥が死亡した事件をきっかけとして発見されました。また、ドックフードの汚染による中毒例も世界各地で発生しています。
アフラトキシンは、主としてトウモロコシやピーナッツ、ソーガム(アワの一種)、大豆などに発生するアスペルギルス・フラブスおよびアスペルギルス・パラジカスによって産出されます。急性症状としては、食欲不振や沈うつ、肝障害(黄疸、腹水、出血傾向)などがみられます。また、強い発ガン性や催奇形性があることも知られています。
イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科より
手持ちの辞書では以上のような最低限のことしか判らなかったので、公衆衛生関係機関の情報をさらっていたら判りやすい記事を見つけましたのでそれらを参考にしつつ、解説します。
「アフラトキシン」以外に食中毒情報や感染症関連のニュースも取り上げられているので、興味のある人には面白いと思います。カビ毒「アフラトキシン」についても取り上げられています。
発生させるカビは二つ
「アフラトキシン」は主にナッツ類やトウモロコシや大豆類などから発生する「アスペルギルス・フラブス」や「アスペルギルス・パラジカス」というカビらが作り出す毒で、それらはアフラトキシンB1, B2, G1, G2, M1など16種類の化合物があるそうです。
アフラトキシンの毒性
「アフラトキシン」を摂取すると動物やヒトに実害を及ぼします。その標的は肝臓で、黄疸やむくみ、昏睡などを引き起こすと言われています。
「アフラトキシン」を一度に大量に摂取した場合は急性の肝障害を起こして死亡に至り、少量を長期にわたって摂取した場合は、肝癌を引き起こすようで、どちらにしても非常に強い毒性を持つカビ毒です。
被害例
平成21年段階の情報ですが、大きな人的被害は2004年のケニアで起こったアフラトキシン中毒で、中毒症状を起こした317名のうち125名が亡くなっています。原因はケニアの主食であるトウモロコシがアフラトキシンによって汚染されていたからです。
被害は人間だけではありません。2006年にはアメリカで販売されていたダイヤモンドペットフード社の販売していたドッグフードがアフラトキシン汚染されており、それを食べた犬23匹が死亡、イスラエルでも同じ会社のペットフードを食べた犬23匹が死亡しています。
これらのアフラトキシンは大量に摂取するとヒトや動物に急性の肝障害を起こします。主な症状は黄疸、急性腹水症、高血圧、昏睡などです。最近では2004年にケニアでアフラトキシン中毒が発生し、317人の黄疸患者が報告され、そのうち125人が死亡しました(患者致死率:39%)。湿気の多い環境下でトウモロコシを保存したため、保存中にA. flavusが高濃度のアフラトキシンを作り、それを食べたためと考えられました。2005年には、アメリカでアフラトキシンに汚染されたペットフードを食べた犬が23匹死亡し、同じペットフードでイスラエルでも犬23匹が死亡するという事件がありました。
カビ毒「アフラトキシン」より「アフラトキシンの毒性」
http://www.iph.osaka.jp/s008/030/010/030/020/20180107002000.html
加熱しても無害化できない
「アフラトキシン」は普通に加熱しても毒性は消えないので、発生したら食べないことが鉄則です。
日本の「アフラトキシン」規制
日本では昭和46年より「アフラトキシン」は規制対象になっていますが、明確に基準値で規制されていたのは特に毒性の高い「アフラトキシン」B1だけで、基準値は10μg/kgでした。
平成23年(2011年)より「総アフラトキシン」として規制開始
毒性の高い「アフラトキシン」B1だけが規制値が定められている状態でしたが、国際的に「アフラトキシン」B1以外のG1やG2などの他の種類も規制するべきという動きがあり、平成23年(2011年)10月1日以降から「総アフラトキシン」として基準値が設けられて、基準値を超えた場合は、食品衛生法違反となりました。
ソースはこちらです。
都道府県知事
各 保健所設置市長 殿
特 別 区 長食安発0331第5号
平成23年3月31日厚生労働省医薬食品局食品安全部長
アフラトキシンを含有する食品の取扱いについて
アフラトキシンを含有する食品については、昭和46年3月16日付け環食第128 号及び平成14年3月26日付け食監発第0326001 号に基づき、同通知に示す検査方法によりアフラトキシンB1 が検出された食品は、食品衛生法第6条第2号に違反するものとして取り扱っているところです。
今般、薬事・食品衛生審議会における審議の結果、食品安全委員会の食品健康影響評価、国際動向及び国内流通食品中の含有実態を踏まえ、同号に該当する食品中のアフラトキシンの指標を、総アフラトキシン(アフラトキシンB1、B2、G1 及びG2 の総和)に変更することが適当であるとの結論が得られました。
また、国立医薬品食品衛生研究所における検討の結果、アフラトキシンの検査結果の判定には、粒状食品では1,000 粒以上の試料が必要であり、10,000 粒以上で精密度が高まることが報告されたところです。
ついては、今後、アフラトキシンを含有する食品については下記のとおり取り扱うこととしますので、御了知の上、その運用に遺漏なきよう取り計らわれるとともに、関係者への周知方よろしくお願いします。
なお、昭和46年3月16日付け環食第128号及び平成14年3月26日付け食監発第0326001 号は、本年9月30日をもって廃止します。記
1.アフラトキシンを含有する食品の取扱い
総アフラトキシン(アフラトキシンB1、B2、G1 及びG2 の総和)を10 μg/kgを超えて検出する食品は、食品衛生法第6条第2号に違反するものとして取り扱うこと。2.検査方法
(1)検体採取量について、食品1粒重量が0.1g 以下のものについては1kg を、0.1g を超えるものについては5kg を適用すること。また、粉末状食品については、粉末化によるロットの均質性を踏まえ1kg を適用すること(別添参照)。
(2)食品中の総アフラトキシンの定量は、追って示す方法により実施すること。3.適用期日
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb7040&dataType=1&pageNo=1
本件は、平成23年10月1日より適用すること。
「アフラトキシン」が検出されたことのある食品
「アフラトキシン」B1以外の種類も「総アフラトキシン」として基準値が設けられる前に、日本国内においてもアフラトキシンの検出調査がなされており、アフラトキシンが検出された食品の資料がありました。
「アフラトキシン」が発生しやすい、あるいは、付着している可能性のある食品として皆さんの記憶に刻んでいただき、お買い物の際に気をつけてほしいので紹介しておきます。
ただ、しっかり管理された食品で「アフラトキシン」が付着しているような事は基本的にないでしょうから、「食べるな危険リスト」ではないことを念頭においてくださいね。
というわけで、これから見ていただく表は厚生労働省が公開している資料から抜粋したものです。「アフラトキシン」についての詳しい記載もあるので興味の有る方はPDFファイルを直にご覧下さい。
アフラトキシンが検出された食品の表(平成16年〜平成18年の調査結果)
やはりナッツ類が圧倒的ですね。ただ、ハトムギやココアなどからアフラトキシンが検出されているとは思っていなかったので驚きました。
しかし一番高い毒性がある「アフラトキシン」B1でも基準値以下であれば流通しているようなので「アフラトキシンが検出されている!」と必要以上に怖がる必要はないと思います。
と言いつつ、私は出来るだけ避けたいと思ったので、ナッツ類の産地を確認した上でナッツ入りチョコを食べたいと思います。
最後にひとこと
ひとたび人体に入れば、肝臓を攻撃して肝障害を起こしたり、肝癌を引き起こしたりする「アフラトキシン」は非常に怖いカビ毒。しかし日本では昭和46年から強い種類のアフラトキシンが規制されており、見つかった場合は速やかに排除されているようなのでひとまず安心しました。