葛由来のイソフラボンに痩せる科学的根拠無し|消費者庁が景品表示法違反で16社に措置命令

「イソフラボン」と聞けば「大豆」が浮かびますが、葛(くず)由来の「イソフラボン」もあります。その効果や効能などは当然研究されています。今日はその「葛(くず)由来のイソフラボン」を使用した健康商品の表示に問題があったとして、消費者庁が「景品表示法違反」だと再発防止命令を出していたので取り上げます。

葛由来イソフラボン ダイエット イメージ

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葛(くず)由来のイソフラボンで「痩せる」の表示はダメ

まずはソースをどうぞ。

「イソフラボンでやせる」根拠無し 消費者庁が措置命令

クズの花由来のイソフラボンを含むとうたう機能性表示食品を摂取しただけで「体重やおなかの脂肪を減らす」などと広告をしたのは景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、消費者庁は7日、販売元の太田胃散(東京)やスギ薬局(愛知)、ニッセン(京都)など計16社に再発防止を求める措置命令を出した。

 機能性表示食品は、体にどのように良い効果があるのかを国の許可なく表示できる制度。平成27年に始まり、消費者庁による措置命令は初めてとみられる。

 対象となったのは、太田胃散「葛の花イソフラボン貴妃」、スギ薬局「葛の花プレミアム青汁」など計19商品。摂取するだけで誰でも簡単に内臓脂肪が減少し、外見上の変化を認識できるまで腹部が痩せる効果が得られるような表示をしていた。

 各社から提出された資料では、効果を裏付ける合理的な根拠は確認できなかったという。

産經新聞:2017.11.8 01:26

措置命令を出された16の企業名

今回、消費者庁が景品表示法違反(優良誤認)で改善命令を出した企業は以下の16社です。

会社名と商品名を列挙しておきます。参考にしたのは消費者庁の公開しているPDFファイルです。

参考 葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品の 販売事業者16社に対する景品表示法に基づく措置命令について (PDFファイル)

  1. 株式会社太田胃散:葛の花イソフラボン貴妃、葛の花イソフラボン ウエストサポート茶
  2. 株式会社オンライフ:slimfor(スリムフォー)
  3. 株式会社CDグローバル:葛の花イソフラボン青汁
  4. 株式会社全日本通教:葛の花減脂粒
  5. ありがとう通販株式会社:青汁ダイエットン
  6. 株式会社ECスタジオ:イージースムージーグリーン
  7. 株式会社協和:ウエストシェイプ
  8. 株式会社スギ薬局:葛の花ウエストケアタブレット、葛の花ウエストケアスムージー、葛の花プレミアム青汁
  9. 株式会社ステップワールド:ヘラスリム
  10. 株式会社テレビショッピング研究所 :葛の花サプリメント
  11. 株式会社Nalelu:葛の花ヘルスリム27
  12. 株式会社ニッセン:メディスリム(12粒)
  13. 日本第一製薬株式会社:お腹の脂肪に葛の花イソフラボンスリム
  14. 株式会社ハーブ健康本舗:シボヘール
  15. ピルボックスジャパン株式会社 :onaka(おなか)
  16. 株式会社やまちや:葛の花由来イソフラボン入り きょうの青汁

有名な会社もありましたし、初めて耳にする会社もありました。勧告を受けた企業は、新聞に謝罪広告を載せる等の対応をしています。それらの中で、ニッセンは当該商品の販売を止め、全額返金しています。真摯な態度ですね。

また、株式会社ニッセンは、対象商品の販売を終了し、全購入者に対して実際のものよりも著しく優良であると示す表示をしていた事実を通知するとともに、購入額の全額返金の措置を講じた。

(ソースはファイルの最後の方にあります)

景品表示法の違反をしているとされた企業の実際の表示内容(どんな媒体でどんな表示をしていたか)など詳しい事は消費者庁で公開されています。興味のある方はお読み下さい。

参考 景品表示法関連報道発表資料

葛と言えば吉野葛

葛(くず)と言えば、吉野葛、和菓子、葛餅、葛湯など美味しいものばかり浮かびます。しかし葛にどういう成分があるか考えた事もありませんでした。なので葛(くず)について少し調べました。

葛(くず)

(奈良県国栖(くず)の地名に因むという)

1.マメ科の大型蔓性の多年草。山野に多く、蔓の長さは10メートル以上にも達する。葉は大きく、裏面は白っぽい。秋、葉腋に花穂をつけ、紫紅色の蝶形花を総状に咲かせ、花後、平たい莢(さや)を生ずる。根は肥大し、生薬の葛根(かっこん)として漢方で解熱・発汗・鎮痙剤(ちんけいざい)に用い、また、葛粉を採る。蔓の繊維をとって葛布(くずふ)を織り、また蔓で行李などをつくる。秋の七草の一つ。アメリカなどで帰化植物となる。くずかずら。「葛」「葛の花」「葛の葉」は季語(秋)
2.葛布に同じ。平家物語(2)「ーに墨をぞつけたりける」
3.葛粉の略
4.葛溜(くずだまり)の略。

広辞苑より

葛(くず)という漢字を読めていましたが、漢方薬として知られる「葛根湯(かっこんとう)」の材料になっていることに全く気付いていませんでした。お薬や美味しい葛粉として使い尽くせる葛って素晴らしい植物ですね。

その葛(くず)が現代の技術で研究された結果、解熱などの効果以外にも有効なイソフラボンが発見され、その効果が健康食品に使われるようになっていたのですね。

長年日本人に愛され、食べられ続けている天然の食品「葛(くず)」に「健康効果」も期待できるなんて嬉しいです。ていうか食べたくなりました。葛餅。

葛(くず)由来のイソフラボンの効能を発見したのは?

その「葛由来のイソフラボン」をどんな企業が発見し、研究したのを調べました。

東洋新薬とは

葛(くず)を研究し、「イソフラボン」を発見、研究し「葛の花エキス」を製造していたのは株式会社東洋新薬でした。

東洋新薬は、1993年に化粧品卸販売会社「株式会社セブンシーズ」としてスタートした会社で、4年後の1997年、健康食品部門を切り離し、OEM・ODMメーカーの「株式会社東洋新薬」として、独立、設立しました。

OEMは判りますが、ODMが何なのか判らなかったので調べました。

ODM(オーディーエム)original design manufacturing

相手先のブランドで販売する製品を、設計段階を含めて請け負い、生産・供給すること。相手先ブランドの製品を生産・供給するOEMを、さらに押し進めた形態になる。設計を請け負える高い技術水準が要求される。台湾や中国のパソコンメーカーなどに多い。(パソコン用語辞典より)

「これを作って」と言われて作るだけではなく、「こんなものを作りました。どうですか?」と能動的に動くメーカーさんなんですね。

東洋新薬の研究・技術力

先日、愛媛県産みかん「紅まどんな」に育毛効果が発見されたというニュースを紹介しました。

国産みかんで育毛と認知症予防|愛媛の紅まどんなと河内晩柑(かわちばんかん)

なんとこの発見の陰に、東洋新薬さんが居たのです。

参考 愛媛県との連携協定に基づく成果第2弾を発表―高級柑橘『紅まどんな』が育毛に不可欠な外毛根鞘を保護―(2018/8/28のお知らせ)

株式会社東洋新薬(本社:福岡県福岡市、本部:佐賀県鳥栖市、代表取締役:服部利光)は、愛媛県産業技術研究所との共同研究で、愛媛県限定栽培の柑橘『紅まどんな』の果皮抽出物が育毛に不可欠な外毛根鞘を保護することを確認し、第34回和漢医薬学会学術大会において発表いたしました。

自治体との協力だけでなく、東京大学などの大学とも協力し、日々新しい発見を求めているんですね。そんな東洋新薬の技術力の高さは、トクホ(特定機能性食品)の特許数が一番多いという実績からも伺えます。

東洋新薬の「葛(くず)由来イソフラボン」の商品と説明

東洋新薬が研究・開発し、メーカーにアピールした内容は、「BMIが25以上30未満」の人を対象に「葛(くず)由来のイソフラボン」を12週間摂取して貰った結果、ウエストの太さや腹部全脂肪面積、腹部内臓脂肪面積、腹部皮下脂肪面積を摂取前と摂取後で比較したところ、低値が出た」という内容です。

参考 東洋新薬 日本初「ウエストサイズやお腹の脂肪が気になる方」向けの特保許可取得 ―『葛の花エキス™』を関与成分とした粉末飲料の特保 ―(東洋新薬のお知らせより)

【許可品概要】
(1) 商 品 名:葛のめぐみ
(2) 関与成分:葛の花エキス(テクトリゲニン類として)35 mg
(3) 食品形態:粉末飲料
(4) 許可表示:本品は、体脂肪やお腹の脂肪に作用する葛の花エキスを含んでいるので、お腹の脂肪が気になる方、お腹周りやウエストサイズが気になる方、体脂肪が気になる方、肥満が気になる方に適しています。

【許可品を用いたヒト有効性試験の概要】
BMIが25以上30未満の被験者130名を無作為に2群に群分けし、摂取前のCTスキャンの結果により30名を中止させ、100名を対象とする二重盲検並行群間試験〔注②〕を実施しました。葛の花エキス™を含む食品(被験食品群)または葛の花エキス™を含まない食品(対照食品群)を、それぞれ1日1袋12週間にわたり摂取させました。摂取前、摂取8週間後、12週間後に、ウエスト周囲径の測定、CTスキャンを用いた腹部全脂肪面積、腹部内臓脂肪面積、腹部皮下脂肪面積の測定を行いました。その結果、被験食品群では、対照食品群と比較して、ウエスト周囲径変化量、腹部全脂肪面積変化量が有意に低値を示しました。また、腹部内臓脂肪面積及び腹部皮下脂肪面積それぞれの変化量においても有意に低値を示しました。
このことから、本品は、お腹の脂肪、お腹周りやウエストサイズが気になる方に適した食品であることが示されました。

この説明の中に「痩せる」という記載がありませんし、対象になっているのは「BMI25から30未満」の方と極めて狭い範囲の人達です。

ちなみに東洋新薬が直接販売している商品はこちらです。

この錠剤のサプリメントは東洋新薬のオリジナル商品で、説明文に「内蔵脂肪(おなかの脂肪)を減らすのを助ける機能があります」と記載されているだけで、「痩せる」とは書かれていません。東洋新薬が景品表示法の勧告された企業リストに含まれていないのはそれが理由と思われます。

ただ、勧告を受けた企業は「内臓脂肪」や「ウエストサイズ」が低値の結果を出している事から「痩せる」と書きたくなったのでしょう。しかし、東洋新薬の「葛の花エキス」の説明には「痩せる」という表記はありません。にもかかわらず、商品の説明に「痩せる」などと記載して売れば、消費者が誤認するのは当たり前です。

しかしこういう誤認させる表示を大小の多くの企業がしてしまったのは、新しくできた法律がその背景にあります。

始まったばかりの新制度「機能性表示食品」

「特定機能性食品」マーク付きの商品は続々と増えています。それは市場が解放されたばかりだからです。

消費者目線どこまで通じる?トクホとは違う「機能性表示食品」制度がスタート

食品が体にどのように良いかを国の許可なしで表示できる「機能性表示食品制度」が始まった。科学的根拠を示した論文や製品情報などを届け出さえすれば、「脂肪の吸収を抑える」といった効果をアピールした商品を販売できる。これから、こうした商品が続々と登場しそうだ。

 新制度は規制緩和の一環として導入された。国の許可が必要で審査に数年かかることもある特定保健用食品(トクホ)よりも、商品展開へのハードルが低いのが特長。中高年層を中心に健康志向が高まる中、新たな商機として大手から中小企業まで注目している。

 しかし、市民団体の「食の安全・監視市民委員会」は、これまでに届け出が受理された26商品のうち少なくとも17商品は科学的根拠が不十分だったり、表示方法が不適切だったりするとして、消費者庁に疑義情報を提出した。

 全国消費生活相談員協会は「事業者が正しい科学的根拠を提示するとはかぎらない。届け出をせず販売する事業者も出てくるかもしれない」と警鐘を鳴らす。

産經新聞:2015.6.4 15:50

国の許可が必要ない「機能性表示食品」

記事にもありましたが、「特定保健用食品(トクホ)」は国の許可が必要です。しかし「機能性表示食品」は許可無しに発売できるようになりました。このことはしっかり認識する必要があります。

実際、機能性表示食品のトラブルも起こっています。

「目のピント調節」の機能性表示食品で重篤な健康被害~東京都

健康食品の「危害」相談が急増

 「目のピント調節」をうたう機能性表示食品が原因と疑われる重篤な健康被害が発生したことが10日、東京都の「『危害』の消費生活相談の概要」からわかった。

中略

医師の所見は「機能性表示食品による薬物性肝炎」

都は「健康食品」の相談内容として、機能性表示食品が原因と疑われる健康被害の事例を挙げた。

 それによると、被害者の40代男性は、4カ月ほど前に友人から「目のピント調節の機能性表示食品60粒入り1袋」をプレゼントされ、2カ月前から、表示のとおり1日2粒を朝と晩に分けて摂取し続けたと説明している。1カ月半ほど前に、自宅でオレンジ色の尿が出たため、既往症の尿管結石の再発を疑って医療機関で検査したが、結石ではなかったという。

 その3日後、男性は全にかゆみを感じて、別の医療機関でアレルギー薬の処方を受けたが、もともとアレルギーでなかったため、服用しなかった。全身のだるさとめまいが取れず、5日後に血液検査を受けたが、その翌日に医師から「肝臓検査値が異常に高いので、すぐ来院するように」と指示された。その場で「急性肝炎の疑い」と診断されたとしている。

中略

機能性表示食品制度、安全対策の強化が優先課題に浮上

 「健康情報ニュース.com」では、これまでに機能性表示食品が原因と疑われる健康被害が(独)国民生活センターに寄せられていると報じてきたが、今回は行政による公表となった。さらに、「目のピント調節」という受理件数が多い訴求の商品によって健康被害が発生したため、消費者や業界に与えるインパクトは大きいとみられる。

 機能性表示食品制度については「2年後の見直し」が予定されている。見直しの際には、今回の事例などを踏まえ、安全性確保の対策強化が優先課題に浮上しそうだ。

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重篤な目への副作用が発生したにも関わらず、商品名が公表されていません。これは問題だと思います。

新しい法律に対応できない中小企業

「痩せる」などとうたって飲料を販売すれば、その効果を期待して購入する人は沢山居ます。

故に、新しい制度を利用して新規参入企業がこぞって現れるのは当然の流れです。しかし「機能性表示食品」と表示するためには「科学的根拠」が必要になります。とは言え、その「根拠」を示せる技術やノウハウを全ての企業が持っているわけではないのが現状です。

例えば、今まで受注生産だけをしているOEMの製造業者に「痩せるお茶を作って」「その科学的根拠の資料も出して」と言っても、今まで注文されたものを製造する仕事しかしていない企業に適切な対応ができるはずもありません。

そして体脂肪が減るんだから「痩せる」って書いていいよねと新しい制度のルールを深く解さずに安易に書いてしまう企業も出てしまうのも頷けます(そんなことでは困るのですが)

こういった理由で「機能性食品表示制度」自体を問題視する声もあるのです。

営業力に長けた東洋新薬だからこそ起こった側面も

今回問題となった葛(くず)由来のイソフラボンの効果を研究し、提案した東洋新薬は、その営業力、資料作成能力に長けた企業で、「葛の花エキス」はメーカーに爆発的に売れたそうです。

 「(東洋新薬は)プレゼンテーションなどの資料を作る学術・法務関連の専用部署がある。わりと分業で、その意味で他社の実名をあげた資料作成も(取引先の実名を商習慣上伏せる)営業的な感覚で作ってないかもしれない。攻めている、とは感じるが、懸念されるリスクを示しつつ、ここまで立派な資料を作るのは販売側からすればありがたい」(前出のメーカー)。

 知財戦略に強い企業としても知られる。主力の青汁のOEMでは特許網を構築して他社優位性を確立。「お詫び社告」以降、「葛の花」の販売を休止する企業が相次ぐが、一時は「原料供給が間に合わず、提供をストップしている状態」(別のメーカー)というほど爆発的な勢いで売れた。

通販新聞:2017年8月 3日 17:34

この「中小企業側の事情」に着眼することを教えてくれた面白い特集記事があります。是非読んでみて下さい。判りやすく、読み応えもありました。

参考 機能性表示食品の広告問題 「葛の花」販売企業を〝一斉聴取〟 課徴金調査で処分不可避か

判りやすく、訴求力の高い資料

直接その営業用の資料を見てないのであくまでも想像ですが、東洋新薬の「葛の花エキス」の資料は多くのメーカーが飛びつくほど素晴らしく判りやすい、「ヒット商品」になると期待させるものだったと思われます。実際、5ヶ月で2億の売上があった企業もあり、大ヒットしています。

しかしその売上は「その商品表示説明が相当煽っていたからでは?」と今となっては思うのです。東洋新薬に「学術・法務関連部署」があるならば、法律に抵触する表現は資料に書くはずがないからです。

販売業者と製造元の両方に責任を持たせる

商品の説明文、販売する時のキャッチコピーなどは「販売業者の責任」だと思います。しかし製品や商品、食品の安全性や有効性も担保したものを作る責任は両者にありますから、今後は、科学的根拠の資料を出した側、製造元にもその表現方法や説明文のチェックすることを義務づけてはどうでしょうか。

2年後の見直しに期待

「機能性表示食品制度」は、2年後に制度の見直しが行われる予定です。過剰な表現に対する責任のあり方や重篤な副作用があった場合は公表を義務づけるなど、色々改善される事を期待します。

最後にひとこと

商品を沢山売りたい気持ちは判ります。コピー次第で売れ行きが左右されるのも判ります。しかし「事実誤認」「勘違いさせて」買わされた消費者がどう思うのか。その後、その企業に対してどういう感情を抱くのかを、販売業者や製造業者はもっと真面目に考える必要があるでしょう。

ただ、消費者にも問題はあります。「飲むだけで痩せる」文言は魅力的ですが、口にしただけで「痩せる」なら、それは警戒するべき食品でもあります。その点を今一度再認識して、安易に商品に飛びつかないことも大切です。

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